Humph, please throw away person who has done ppp or lost xxx!


 高須圀弘は煙草の箱から一本を取り出して火をつけ、肺に深く煙を吸い込んだ。
「こらーっ! 高須ーっ!」
 校庭のど真ん中、一世代前のヤンキーのような座り方で、数世代前のヤンキーが着るような長いダボダボの学ランに身を包み、何食わぬ顔で圀弘は灰皿を取り出した。
「堂々と煙草など吸いやがって……おい!」
 生徒指導の山岡の怒声が校庭に響く。いつもならそんな言葉を放つ前にとっくに素っ飛んで来て正拳の一つでもくれているはずなのだが、今はそう出来ない止むに止まれぬ事情があった。
「先生、そんなこと言ってる場合じゃないですよ! しっかりしてください!」
 それどころか、女子生徒に窘められている。普段の山岡にこんな口を利けば即座に生徒指導室行きだが、彼女の言う通り今はそんな事を気にしている場合ではない。
「高須くんが絶対に何か知っているはずです」
「そうですよ! 先生は、たった一人の大人なんですから、お願いします!」
 確かにこの場に居る大人は山岡一人だけ。他の大人たる教員たちは皆、<b>空に消えてしまった</b>。
「う、うむ」
 頼りにされて少し落ち着いたかに見えた山岡だったが、目が泳いでいる。
「た、高須ーっ! こっちに来てくれ!」
 そこは外だというのに妙に静まり返っていて、それほど大きな声を出さなくても圀弘には聞こえるのだが、興奮している山岡にはそんな事は関係ない。
「おい、聞こえてるのか!? こっちに来いと言ってるんだ!」
「先生、そんな威圧的に言ったら絶対来てくれないでしょ。ここは下手に出なきゃ」
 さっきも山岡に意見した女子生徒がまた言った。彼女は小声で山岡に囁いたのだが、圀弘の所にまでしっかり聞こえていた。屋外とは思えない完璧な静寂が辺り一帯を覆っていて、誰かの咳払い一つさえ克明に聞き取れる程だ。その不気味な空気は尚のこと今朝の異常性を象徴していた。
「だ、だが俺があの不良野郎に媚びるなど……」
 生徒をチラチラと窺いながら逡巡している山岡を、圀弘は鼻を鳴らして笑った。
 その微かな音は、しかし静寂の中でよく響く。
「い、今笑ったな高須。何がおかしいんだ。やはりこれはお前の仕業なんじゃないのか!」
 憤る山岡に圀弘はまたしても「フン」と笑い、山岡の方を向いた。
 そこには山岡、そして数人の生徒が、
 あたかも校舎の壁を地面として、東の方角に重力が働いているかのように――実際そういう状態なのだが――東の校舎の壁面に立っていたのだ。
 校庭に威風堂々とヤンキー座りしている圀弘を、校舎の壁に立って見上げている山岡と生徒たち。
 異様な光景だった。
「この野郎、何がおかしい! 畜生、貴様が絶対に何かしたんだ! 貴様はいつも俺に反抗的だった。俺をこんな目に合わせやがって!」
「先生! 落ち着いて!」
 さっきの女子生徒――よく出てくるのでP子とでもしようか――が心底呆れたような顔で、興奮して暴れる山岡を諭した。
「この野郎!」
 山岡が地面(校舎の壁面だ)を思い切り殴りつける。そこは1階の窓だった為、盛大な音を立ててガラスが割れた。
「先生!」
 必要以上に鳴り響いた割音に驚き、生徒たちが慌てて山岡を止めた。
 押さえつけられ、間もなく山岡は大人しくなった。
 その一部始終を見ながら、圀弘はもう一度「フン」と鼻を鳴らした。



「あの」
 P子とはまた違う女子生徒――Q子としよう――が言った。
「どうしてこんな状況になったのか、よく考えてみるべきじゃないかと思います」
 Q子は度のきつそうな丸眼鏡におかっぱという格好であり、いかにもガリ勉オタクの面相だった。それだけに語り口だけは理知的である。決して頭のいい方ではないこの高校でも、状況が差し迫れば働き蟻の法則とでもいうか、ブレーン的役割を果たす人間が現れるという事なのだろうか。
「どういう事?」
 P子が聞き返した。ちなみにP子はQ子とは違って、見た目も感性もごく普通の生徒である。
「この状況は高須くんのせいとかいうレベルのものじゃないと思うの。だって、朝礼の最中になんて、どう考えてもあり得ないわ。人間に出来る事じゃない」
「でも実際に起きてる」
「だから、これはもっと超現実的な現象なのよ」
「そうだ!」
 ここに来てようやく男――M男としよう――が発言した。CSC(コンピュータサイエンスクラブ)の部長である。
「一般相対性理論によれば、重力という物は地球の質量が膨大である為に生まれた時空の歪みで、つまりその原因となっている因子は地球という存在だ。だから重力の方向は常に地球に向かっている。それが今の我々のように、何にもないはずの方向に重量が働くなどという事は、通常ではあり得ない。けれどそれが実際に起きているのだから、超現実的な現象だという事は疑いようがない!」
 少しどもりながらM男はそうまくし立て、上に居る圀弘をキッと睨み上げて続けた。
「だが彼はどういう訳か、我々のように現象の影響を受けていない。これはおかしい。だから何らかの条件によって、この現象の影響は左右されていると考える事が出来よう!」
 速いのか遅いのかよく分からない喋りでのM男の演説が終わると、さっきまで隅の方でコソコソしていた男たちがやって来て一斉に拍手をした。CSCの部員である。
 この部は、部長がカリスマ的存在(あくまで部員にとってのみだが)である事で有名で、もはや新興宗教のようになっていて学内では完全に浮いた存在になっている。
「つまり逆に言えば、条件が判明すれば現象の影響を変える事ができる。どうすれば元に戻れるかも分かる」
「そういう事ね」
 やろうとしていた解説役を奪われて不満そうなQ子が口を挟んだ。
「だから分析をより深める為、今の状況を整理する必要があるわ」
「そ、そうとも」
 M男はたじたじしている。
「この現象が始まったのは……」
「臨時朝礼の最中だったね」
「確か、風紀の事で山岡先生が話してた時だったわ」
 言ってからQ子はチラリと山岡の方を見た。
 山岡は何やらブツブツと言いながら、自分で穴を開けた窓の中の教室を見つめている。まるで壊れてしまったかのようだった。
 私たちは何とか平静を保っていられるけど、年を取ると不可解な事態に対する免疫がなくなるのかもしれないな、と若いQ子は思った。
「風紀が乱れているなんてつまらない事で、やる必要のない朝礼なんかを始めたりするからこんな事が起きたんだ!」
 山岡が居るのもお構いなしに、M男がヒステリックに喚いた。
「お、落ち着きなさいよ」
 P子がM男を宥める。
「そんなの言いがかりでしょう。それより、その後の事を確認しましょうよ」
「ああ。突然、皆の身体が空中に浮いたんだ」
 M男は震えた声で言った。CSC部員たちがカクカクと頷く。
「そして殆どの人が空に飛んで行って見えなくなってしまった」
 P子は、吸い込まれるように上空へ消えた先生や生徒たちの事を思い出した。落ちてこない所を見ると、もう生きてはいまい――P子は身震いした。
「で、私たち数人だけは、この校舎の方に飛ばされたのよね」
 Q子は生徒たちを見回した。あれこれと考察をしているP子とQ子、M男――全体の約半数であるCSC部員の男たちも一応――を除けば、後の生徒は恐慌を起こして伏しているか、こちらの様子を窺って黙している者が殆どであった。
「数えてみると……19人? 山岡先生も入れれば20人かしら」
「上に居る高須くんで21人よ」
 圀弘は山岡が参って以来、ずっと無言で煙草をふかしている。
「まず東の校舎に飛ばされた我々の事だけを考えてみよう。ここに居る20名の内、男子は10名、女子は10名」
「それで男子の10人のうち、1人が山岡先生で、9人が……」
「CSCね」
 今こうして確認する事で初めて分かったが、男子は山岡を除けば全員CSCである。山岡は圀弘こそが何かしたと糾弾していたが、どちらかといえばCSC連中の方がいかにも何かしそうだ。
「女子の方はどうかしら」
「女子は……」
 つまりさっきQ子が見回した、泣き伏せていたり様子を窺ったりしてるのは、全員女子生徒だった訳である。しかしQ子にとっては何人かは見覚えはあるものの、知らない人も混じっていた。
「うーん、学年もバラバラみたいだし、別に共通している所はなさそうね」
「部活も関係なさそうだし、何も分からないわ」
「しかしそれでもこの20人、そしてこの20人とはまた別に上の高須くんが持つ条件を探さなくてはならない。つまりこうだ」
 校庭の壁に部長がガリガリと汚い図を描いた。

重力の方向

 ↑全校生徒・教師(条件1)

       →CSC・女子10名・山岡先生(条件2)

 ↓高須君(条件3)
――――――――――――――――

「ふむ。重力というからには……」
 描き終えたM男はそう言ってジロジロとP子の身体を舐めるように見た。P子は反射的にスカートを押さえる。
「体重が関係しているというのはどうだ?」
「ちょっとそれどういう事よ!」
 P子は憤慨した。
「あんたたちCSCなんてデブばっかりじゃない!」
 P子の暴言に、CSCがどよめく。
「体重が原因なんだったら、私たち女子が大半の男子を差し置いて残れるはずないでしょ! 周りの女の子たちだってみんな普通よ! 私だって平均よりは下なんだから!」
「身体的特徴という訳ではなさそうよ。女の子たちはみんな痩せているし、CSCの人でもスリムな人は居る。それに高須くんだって背は高いけど痩せてるじゃない」
 冷静な声でQ子が場を取り持った。
「それよりもむしろ、身に着けている物……というのはどうかしら?」
 そう言ってQ子は眼鏡を触った。
「身に着けている物か。だが眼鏡を掛けているのは我々と君だけのようだし、制服などの類であれば男女で共存しているのも変な話だな」
 M男の言う通りである。
「だが高須くんに限っては、唯一である条件を持っているようだね」
「どういう事?」
「彼は素行がよくない、いわゆる不良だ。制服も、何がカッコいいんだか分からないがあの通りだ」
 言いながらM男は頻りに圀弘の様子を窺っている。ビビってるんだったら貶さなきゃいいのに、とP子は思った。
「あの格好が彼を普通の状態に繋ぎとめているのだというのは十分に考えられる」
「そうは言うけど、じゃあ何で私たちがかろうじて助かってるのかってのが全然説明できないでしょ。それが出来なきゃ全然意味ない!」
「そうね。1人にだけ通用する特徴を見つけたってきりがないわ」
 女性2人に押されて、M男はたじろいでいる。
 M男が大人しい間は部員たちも大人しい。
「それより、確認したい事があるんだけど」
 Q子がM男を見て言った。女性に慣れていないのか、やはりたじろいでいる。
「CSCは、部員は何人居るの?」
「……12人だ」
「全員男?」
「勿論だとも!」
 何が勿論なのかQ子には分からなかったが、とりあえず続けた。
「その12人のうち9人がここに居るのね」
「そうだ!」
 M男は急に躁的な表情になり、部員たちの方に向き直って高らかに宣言した。
「だがこの9人は真の9人と言えるだろう!」
 P子は眉をひそめた。
「真の9人?」
「そうとも! あとの3人、小山田と内海と斉藤……あいつらは、邪道の徒なのだ!」
 M男はまたえらくエキサイトしている。
「そうだ! もしかするとこれは、選民の過程なのかもしれないな!」
 M男が叫んだ。部員たちがどよめく。
「選民って、何よ」
「様々な物理的特徴が棄却されてしまった今、そう考えるのは自然ではないか? あくまで仮説なのだが、これを却下するに足る理由は見当たるまい!」
 いちいち仰々しい物言いをするM男に、いい加減P子は頭痛がしていた。だが議論しているQ子や部員はどちらかというとの人間なので、むしろ自分が異端なのだろう、と諦観もしていた。そもそも部員たちはM男に任せて自分たちは全く議論に参加しようとはしていない。
「600人から居た全校生徒、そして50人は居た教師たち……あるいは世界に等しく同じ事が起きているのかもしれないとなると、その中で生き残っているのは我々だけなのでは!? 全員が空に飛んで行ってしまった方がまだ納得のいく状況であるにも関わらず、我々20人だけ――上の彼も入れれば21人だが、莫大な母集団の中で我々だけが生き残る事が出来た! これは神様が我々を選んだと考えられるのではないか!」
 語尾はもはや裏声であったが、いやに残響した。部員たちは歓声と拍手を送っている。
「コンピュータサイエンスクラブという名の割には、やけにオカルティックなのね」
 Q子の突っ込みに、そんな事はどうでもいいだろうとP子は思ったが、何を言っていいか分からない。
「何を言う。科学とは世の中に起こる出来事、世の中にある物、あらゆる仕組みを分析し、理解し、解釈し、理由をつけていく学問だ。神の存在を否定するものではない!」
 そうだそうだ、と部員たちのシュプレヒコール。確かにこの信心を見る限り、むしろ彼らは神を望んでいるのではないかとさえ思える。
「言ってみればこの校舎はノアの箱舟という訳だ。考えてみれば男子10人、女子10人という揃い方は奇妙だ!」
 もはや無茶苦茶である。あんたたちのどこに選ばれるような要素があるんだ、とP子は呆れた。
 Q子も流石に驚いてしまったらしく、言葉を差し挟めない。
「気になるのは高須くんだが……」
 難しい顔をしてM男は空――彼らにとっての――を仰いだ。
「そうだ! 彼はもしかするとその“神”なのでは!?」
 M男は目を見開いた。
「その奇妙な出で立ちは、そうでなければ説明できまい! は、もしや我々の中から残すべき人類を選ぶ視察の為に下界へ降臨なされたのでは!? 今まで清く正しく生きてきた事がこんな形で報われるとは……感激だ。我々CSCの活動を、評価して下さって誠に感謝致します!」
「無茶苦茶よ!」
 P子の言葉など、M男の耳に届かない。
「で、でも、それならどうしてCSCの人全員は選ばれなかったのかしら……?」
 ふとQ子が呟いた。
「ああ、小山田たちか?」
「邪道とか邪教とか、さっき言ってたけどそれは一体どういう事なの?」
「あ、あいつらは、その」
 それまで流暢だったM男が、久しぶりにどもって言った。
「学校のパソコンを使って、ハ、破廉恥なゲームをだな」
「な……」
 一体何を口走るのかと思えば――P子は赤面した。
「と、とにかく、か、神よ!」
 M男はその場に膝をついて頽れ、両手を挙げながら圀弘を見上げ崇めた。
「先程は失礼な事を言って申し訳ありませんでした! 数々の冒涜をお許し下さい」
「ちょっとちょっと、待ちなさいよ!」
 堪りかねてP子は叫んだ。M男はカメレオンが豆鉄砲を食らったような顔をした。
「馬鹿じゃないの!? 何が神よ、何が選民よ、何がノアの箱舟よ! いきなり破廉恥なゲームがどうとか言い出すし……そりゃ今の状態は普通じゃないし、そういうおかしな事を考えてしまうのも無理はないかもしれないけど……」
 P子は大きく息を吸い込んだ。
「冷静になりなさい! 高須くんが神様? いくら何でもそんなのおかしいでしょう!」
「な、何を言う!」
 M男はすっかり自説が気に入ってしまったらしく、それを貶されて真っ赤な顔をしている。
「じゃあ頼んでよ! 高須くんに元に戻してって、頼んでよ! 神様なんだったらそれくらい出来るでしょう!?」
「馬鹿な! 神は望んで我々を選び、それ以外の者を排除なさったのだ! それを誇りに思いこそすれ、なかった事にしてくれなどと言えるはずがない!」
「もう! そんな訳ないって言ってるのが分かんないの!? この――」
「うるせぇーー!」
 もはや議論ではなく感情の出し合いと化していたP子とM男の諍いに、突然、水を差す声が響いた。
 山岡だった。
「うるせぇうるせぇ、貴様らの下らねぇ話はもう沢山だ! 俺が神様に選ばれただって!? 馬鹿が! 俺はなぁ、教師の道25年、ずっとコツコツとやってここまで来たんだ。女共には野蛮な体育教師だと馬鹿にされて、それでも夏はクソ暑い、冬はクソ寒いグランドで25年も這いずり回ってきたんだよ。それを、こんな訳分かんねぇ仕打ちしやがって……」
 山岡が呻いた。
「女房もいねぇ、恋愛もした事がねぇ、セックスどころかオナニーさえした事もねぇ! ずっと真面目に生きてきたっていうのに、俺の人生は惨めなままこんな馬鹿みたいな結末か、ふざけんじゃねぇ!」
 山岡が立ち上がり、P子を睨んだ。P子は「ひっ」と声を上げた。
「このまま終わってたまるかよ!」
 そう叫ぶと、山岡はP子に向かって突進していった。
「き、きゃあああ!」
 P子は慌てて逃げたが、屈強な山岡から逃れられるはずはない。
 あっと言う間にP子は組み敷かれ、服を脱がされる。
「畜生、畜生……」
 山岡はジャージを脱ぎ捨て、白いブリーフも脱ぎ去った。P子の絶叫が響き渡る。周りのCSC部員も女子たちも、茫然自失といった風にその様子をただ見ていた。
 Q子もあまりの事に竦んで対応が出来ないでいたが、M男は唇を痙攣させながらも頑張った。
「ば、馬鹿な事を! 神の御前だぞ! そんな蛮行が許されるはずが……」
 M男は荒い息を吐きながら、まるで母親の機嫌を窺う小さな子供のように圀弘を見た。
 遠くに居る圀弘の表情などは見えようはずはなかったが、圀弘のあの馬鹿にしたような「フン」の笑いだけは、M男の耳にハッキリと聞こえた。
 P子の悲鳴を聞きながら数秒の逡巡があり、やがてM男は絶叫した。
「そ、そうか! 我々は選民の徒、我々の優秀な遺伝子を絶やさぬよう、即座に子作りに励みなさいと神は笑っておられる! お、お前たち、すぐに、我々も始めるのだ!」
 血走った目で、この上なくどもりながらM男はCSC部員たちを叱咤した。部員たちの間で動揺が走ったが、山岡とM男によって充満したある種の狂気に冒されてか、どよめきはやがていつかの歓声と拍手に変わっていった。
 Q子が目を見開いた。
「行けぇぇぇ!」
 おーーっ! と部員たちが吼え、遠巻きに見ていた女子生徒たちの方に突進して行った。すぐに幾多の悲鳴と足音が上がり始める。
「何を恐れる事があろう。神の思し召しだ」
 Q子の元にやって来たのはM男である。
「しょ、正気じゃない!」
「大丈夫。僕は経験がないし、穢らわしい自慰などという行為もした事はない! これは神聖な儀式なのだ!」
「来ないで!」
「さあ行こう、約束の地へ!」
 悲鳴が一つ増え、哀れ校舎の壁面では地獄の乱交パーティーが繰り広げられた。
「う、うおおおぉぉぉ!」
 山岡が果てる声。悲願達成とばかりに満悦する山岡と泣きじゃくるP子であったが、その時突然2人の身体が宙に浮かんだ。
「な、何!? どういうこ……うわぁぁぁぁ!」
「わああああ!」
 下半身を丸出しにして繋がったまま、山岡とP子は空へと消えていった。
「うわあ!」
「きゃぁーーーー!」
 次々と浮かんでは空へ消えていく半裸の生徒たち。1組、2組と次々消えていき、遂にはQ子たち2人だけが残った。
「ちょ、ちょっと! 貴方、周りを見なさいよ! おかしいわよ!」
「周りの事なんて気にしないで! さあ、挿れるよ……」
「挿れるんじゃないわよ――は、初めてなのに……」
「うっ! 出る!」
「早すぎるわよ!」
「うわぁぁ!」
「きゃああ!」
 Q子たちも凄い勢いで空へと消えていった。
 騒々しかった校内にまたあの不気味な静けさが戻る。
 圀弘は灰皿に吸殻を押し付けて次の煙草を求めて箱を傾けたが、出てくるのは茶色い葉屑だけだった。
 圀弘が初めて立ち上がる。



 圀弘は精通がまだだった。


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